架空女子でごめんね
そう思っているのに。
言葉が続かない。
背中を伝う冷汗。
血の気が失せるって、こういうことなのかもしれない。
「ん?なんか『美鳥』ちゃん、つらそうじゃね?」
後藤くんが私に近寄り、
「顔色悪くない?大丈夫?」
と、言った。
「大丈夫です」
そう答えるものの、緊張と不安で吐き気も感じる。
(だってこれから私、本当のことを伝えたら、徹平くんに嫌われるかもしれないんだよ?)
うつむいて。
深呼吸する。
「大丈夫じゃないじゃん」
すぐそばで聞こえる徹平くんの声に、私は顔を上げた。
徹平くんと目が合う。
黒く輝く、澄んだ瞳。
徹平くんのその美しい瞳の中に。
私。
私が存在している。
「急ぎの用じゃないなら、今度にしようよ。今日は帰ってゆっくりしたほうがいいよ」
徹平くんは、
「ごめん、オレちょっと抜けるわ」
とみんなに言ってから、
「家まで送るよ。歩ける?」
と、私に聞いた。