架空女子でごめんね
徹平くんは乱れた息を整えるように、軽く深呼吸した。
「え、な、なんで?」
私には今、何が起きているのかわからない。
「一緒に帰って」
徹平くんはそう言って、自転車から下りた。
「本当は後ろに乗ってもらって、家まで送るつもりをしてたんだけど……」
徹平くんの形の良い眉毛が、ほんの少しハの字に下がる。
「さっき一緒だった奴らにそう言ったら、道路交通法?……なんか規則にひっかかるって言われて」
スマートフォンで検索したら、きちんと書かれてあったらしい。
原則違反だ、と。
「まぁ、危ないもんな?ケガとかさせたくないし」
徹平くんは自転車をおして、私と並んで歩き出した。
車道側に自転車。
真ん中に徹平くん。
歩道側に私、の順番。
ときめきが勝手に目を覚ます。
「もう遅いし、女の子ひとりで長時間を歩いて帰るって心配じゃん。だからオレと一緒に帰って?徒歩は変わらないけど」