架空女子でごめんね
「あっ」
徹平くんも、私のほうへかけ寄って来る。
「ん?徹平?どした?」
後藤くんを無視して、徹平くんは私にこう言った。
「久しぶり」
「……!?」
(『久しぶり』って、どっちへの言葉!?)
よくわからない。
『美鳥』に対して?
それとも私、津山すずめに対して?
『美鳥』にだったら、しばらく連絡をしてなかったから「久しぶり」の言葉も全然変じゃない。
でも私、津山すずめにだったとしても、あの日、鍵を一緒に探してもらった日以来、徹平くんとは話していないから、やっぱり「久しぶり」と言われても変じゃない。
(どっち!?)
混乱状態で何も言えずにいると、近寄って来た後藤くんが眉間にほんの少しのシワを寄せて、
「誰なの、この子」
と、徹平くんに聞いた。
「誰って……」
徹平くんは後藤くんを見た。