架空女子でごめんね
私はさっきから理解が追いつかなくて。
やっと発した言葉が、
「え?あの、えっと、……はい」
だった。
それでも徹平くんは、
「良かった」
と、笑ってくれる。
白くて清潔そうな歯。
キレイな顔立ち。
笑うと、もっと小さい子みたいに見える。
(こ、これは、事件だ)
頭の中でぐちゃぐちゃに散らかっていた出来事を整頓していくと。
今までずっと、すみっこ女子として過ごしてきた私には。
およそ抱えきれないくらいのキラキラした展開。
人気者の男子と会話すること自体が、すでにあり得ないことのはずなのに。
一緒に鍵を探してもらって。
一緒に下校までしちゃうの!?
(キャパシティーが大幅にオーバーですよ)
「名前、教えてよ」
徹平くんが私の顔をのぞきこむ。
恥ずかしくなってうつむいてしまう。
そんな整ったキレイな顔で。
私のこざっぱりしたシンプルな顔を見ないで。