架空女子でごめんね

私はさっきから理解が追いつかなくて。

やっと発した言葉が、
「え?あの、えっと、……はい」
だった。



それでも徹平くんは、
「良かった」
と、笑ってくれる。



白くて清潔そうな歯。

キレイな顔立ち。

笑うと、もっと小さい子みたいに見える。



(こ、これは、事件だ)



頭の中でぐちゃぐちゃに散らかっていた出来事を整頓していくと。

今までずっと、すみっこ女子として過ごしてきた私には。

およそ抱えきれないくらいのキラキラした展開。



人気者の男子と会話すること自体が、すでにあり得ないことのはずなのに。

一緒に鍵を探してもらって。

一緒に下校までしちゃうの!?



(キャパシティーが大幅にオーバーですよ)






「名前、教えてよ」



徹平くんが私の顔をのぞきこむ。

恥ずかしくなってうつむいてしまう。



そんな整ったキレイな顔で。

私のこざっぱりしたシンプルな顔を見ないで。


< 8 / 132 >

この作品をシェア

pagetop