架空女子でごめんね

「……小説読んでるとさ、恋愛ってキレイとかキラキラしてるだけじゃないんだなって思うんだ」

「そうかもしれないね」

「それでもさー、頑張るんだよ。物語の人達は」



私は、憧れのプリンセスを思い出した。

キラキラしていて華やかで。

気品があって優しくて。

プリンスに迎えに来てもらえるような、特別な存在。



……そうなりたかった。

プリンセスみたいになりたかった。

徹平くんに迎えに来てもらえるような。

特別な私になりたかった。



「お姉ちゃんも、頑張ってみてもいいんじゃない?」

「え?」

「自分の力で、あんなに大変身したんだもん。その努力と根性は、とても尊いことなんだよ」

「……私だけの力じゃないよ」



山川さん、福本さん、島田さんやクラスのみんな。

私に協力してくれた。

大事な友達。



「もう遅いなんてことは、きっとないよ」



ひばりは私の鞄を開けて、スマートフォンを取り出した。


< 86 / 132 >

この作品をシェア

pagetop