架空女子でごめんね

このまま、謝らなくちゃ。

『美鳥』じゃないんだって。

私は、徹平くんを。

……騙していたんだって。



(言わなくちゃ)



のどの奥が狭くなったみたいに。

ギュンと痛くなる。



(あ、泣きそう)






何も言わない私に焦れたのか、徹平くんがこう言った。






「知ってるよ」






「えっ」



背中に伝う汗。

生ぬるい風が、気持ち悪い。



「言ってくれると思っていたのに」

「えっ、あ、あの」

「本当のことを話してくれるって、オレ、ずっと待ってたよ」



『知ってる』

『本当のこと』




私が。

津山すずめが。

『美鳥』だってことを。





架空の女の子だってことを。






(……でも、だったら)



「なんで?」



混乱してきた。

ずっと知ってたの?





急激に頬が熱を持つ。



(恥ずかしい……!)




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