架空女子でごめんね

何度だって。

機会はあったはずなのに。

今だって。

徹平くんは。

話すチャンスをくれていたのに。



もう、徹平くんの背中は見えなくて。

自分でもわかる。

きっと今、私は真っ青な顔をしている。



私の臆病で。

全部、台無しにした。



涙が出てくる。

自分が許せなくて。

悔しくて。

ゴシゴシと涙を拭いた。



メイクをしていないから。

どんなに強引に拭いても。

何も変わらない。



これが、私。

本当の私。



ずるくて。

臆病で。

自信なんか、持てない。



着飾ったところで。

『美鳥』になったところで。



何も変わらなかったのは。



私。

津山すずめが変わらなかったからだ。




プリンセスになんか、なれない。

特別になんか、なれないんだ。



今のままじゃ。

きっと、ずっと。




嘘なんか、いらない。

本当が欲しい。



徹平くん。




徹平くんへの、この気持ち。

私にとっての、本当は。



この恋心なんだ。





< 92 / 132 >

この作品をシェア

pagetop