神様、この恋をよろしくお願いします。
ちょっとだけ、あれはいいことをしたつもりだったのに。

頼まれたわけじゃないけど、絶対ピンチだったじゃんってあたしなりに必死だったんだけどなぁ。

「そこ!スカート短い!」

ビクッと体が震えた。本郷先生の声が響いたから。

校門のところで、女の子が捕まってる。

そうだ、今日は服装検査の日だ!

なんだかんだ昨日のことが離れなくて、ずーっと頭の中を巡ってた。

あんなにドキドキすること初めてだったから。

不良に絡まれるなんて経験、今までのあたしの人生ではなかった。
そーゆう意味でのドキドキ、できることならもう二度と味わいたくない。

「相沢っ!」

たとえ本郷先生の声がさっきよりも力強く響いてたとしても。

実は生徒指導の先生でもある本郷先生は今日は一段と力が入ってる。

今日こそは相沢くんのカラコンやら髪の毛やらをどうにかしたいんだ。それだけじゃなく、制服だってだるーんって感じなんだから。

見たくはなかったけど嫌にでも目に入って来る、だって校門の前に立っている本郷先生の前を通らないと学校へ行けないんだもん…!

「相沢!まずこの場でコンタクトを外せ!髪の毛は俺が今から直してやるからこのまま職員室に来い!あと制服も…、聞いてるのか相沢っ!!」

たぶんだけど、今日も全然聞いてない。

髪の毛で隠れてイヤホンをしてるかはわからないけど、イヤホンしてなくても聞いてない…と思う。

「相沢!お前はどれだけ輪を乱してるのかわかってるのか!?」

ほら本郷先生もヒートアップしていっちゃう。さっきよりも声が大きくなった。

「いつまでもそうしていられると思うなよ!」

本郷先生の気持ちだってわかるけど、校門の前でそんな大声で言ったらみんなに聞こえちゃう。

あんまり聞きたくない言葉も。

「お前みたいな奴がいるから世の中腐っていくんだ!」

周りにいた子たちは怯えちゃって、あたしもきゅって口がかたくなった。
おはようって言うのもできないくらいに。
< 10 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop