神様、この恋をよろしくお願いします。
「…はぁ」

相沢くんが息を吐いた。
気だるそうに、首を傾けながら本郷先生の方を見た。

高まる緊張感、あたしと同じように動けない子がたくさんいた。

じーっと本郷先生と相沢くんに注目してた。

「地毛なんですけど、あとカラコンもしてないっす」

え、そんな堂々とした嘘付くの!!?

しかもそんなめんどくさそうに!

そんなこと言ったら本郷先生を余計刺激するだけなんじゃ…っ

「ふざけるなっ!!!」

ゴーンッと地面が割れるかと思うぐらい低い声が響いた。

「お前は教師をバカにしてるのかっ!!!」

本郷先生の怒りのヒットポイントのライフが尽きた。

その瞬間、ぐわっと右腕が掲げられる。

あ、やばい!それはやばい気がする!

本郷先生の右手が相沢くんのキラキラの髪の毛に向かって落ちていく。

それはちょっと…っ

止めなきゃ!

昨日のことが思い出される。

本郷先生は不良じゃないけど、先生だけど、それでもやっていいことと悪いことがあるよね…!

でもどうしよう、動けない…っ!




パシンッ




乾いた音が聞こえた。

「先生、手を上げるのは良くないですよ」

「…並木っ」

同じクラスの並木健太くん。

あたしたちのクラスの委員長。 

華麗に本郷先生の手を受け止めていた。
にこりと笑う委員長を見てバツが悪そうに本郷先生が手を下ろした。

「クラスの委員長として、僕が注意しておきますから」

「…~っ、わかった。今回だけだぞ!」

さすがにこの状況にマズイと思ったのか、急に大人しくなった本郷先生はサッと相沢くんから視線を逸らし何事もなかったかのように服装検査に戻って行った。

…すごい空気、だったなぁ。

委員長のおかげでやっと動けるようになった体ですぐに駆け寄った。 

「委員長、相沢くん!大丈夫!?」

「あ、宝条さん。おはよう」

「おはよう!大変だったね、なんともない?」

「うん、俺は大丈夫」

「そっか、よかっ」

た、と言い掛けたところですでに相沢くんはスタスタと1人歩いて行ってしまっていた。

えーーーー…

あたしの開いた口がふさがらない。

今相沢くんのせいでこうなってるんだけど?わかってる??

「俺たちも行こうか」

委員長がにこって笑うから、うんってあたしもつられるように笑って返すしかなくて。
相沢くんとは一言も話せないまま教室に着いてしまった。
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