神様、この恋をよろしくお願いします。
「ちょっと、相沢くん!どこ行くの!?」

あたしの問いかけも聞かないで相沢くんはひたすらに駆けていく。

あたしの腕を掴んだまま、だから連れられるままキラキラの髪の毛を見ながらあたしも必死に走ってた。

暗い空の下でも、キラキラ光ってた。

細い道を通ったり、知らない道を通ったり、こんなとこ曲がるんだ!みたいな道を通ったり、やっと手を離された時にはだいぶ走ってきてしまった。

「…はぁ、はぁっ」

息だってうまくできないぐらい、全力疾走でここまで来ちゃった。

「…ぁいさわくん、何?何があったの!?」

「………。」

相沢くんも息を整えてるのかすぐに返事は返って来なかった。

2人して一生懸命、呼吸を整える。肩を揺らして、はぁはぁって。

何この状況、一体何が起きたの?
てゆーかここはどこなの…?

はたっと視線を逸らした先には相沢くんの髪みたいにキラキラした世界が広がっていた。

「わぁ、キレイ…!」

たぶんどこかの丘の上、だからその下に広がる街の灯かりが浮き出て来たみたいに光っていた。

「えっと、これなんて言うんだっけ?」

「何が?」

「ほら!こーゆうの!…あ、夜景!」
 
「…それが出て来なかったのか」

「だって夜景なんて見ることないでしょ!」

夜遅くまで外にいることなんて普段はできなくて、あたしにとってはこれがすごく珍しくて、それは少しワクワクした。

あたしが住んでるここにも、こんなキレイなところはあったんだ。

「ねぇねぇ、あたしの家どこかなぁ!」

「知らねぇよ」

「相沢くん家はどこ?」

「知らねぇよ」

「それは知ってるでしょ!」

たまに吹く夜風が少し寒かったけど、そんなの気にならないぐらいあたしは夢中だったんだ。

「キレイだね…!」

ちょっとした夜の冒険みたいで。

「…女ってなんでそーゆうの好きなの?全然わかんねぇけど」

「相沢くんは思わないの?」

じっと街の灯かりを見つめ、吐き捨てるように相沢くんが答えた。

「大嫌いだな」

その意味の方があたしには全然わからなかったけど。
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