神様、この恋をよろしくお願いします。
「小夏何願ったの?めっちゃ遅くなかった?」

先にお参りし終えたナナが鳥居の外で待っていた。

「え、うん。大事なこと、かなっ」

「よっぽど念入りのお願いだったんだね」

実際はギリギリまで願い事が思い付かなかったからなんだけど、それで遅くなっちゃただけなんだけど…でも願いが叶ったらいいなぁってそれは本当に思ってるから。神様、よろしくね。

「じゃあ戻ろっか、そろそろお昼じゃない?」

「そだね、お腹空いた!」

「私もー、喉も乾いたし」

「自然公園でお弁当だよね?」

「うん、自由にピクニックシート敷いてって感じじゃない?」

そんな話をしながら降りた階段はあっという間で、行きより全然余裕だった。
階段は降りる方がラクなんだなぁと思った。

さぁあとは橋を渡るだけ、あたしの中ではもうお弁当タイムを想像していた。

今日はお母さんのからあげだから楽しみ♡

なんて、浮かれるあたしに別の意味で浮かれさせてくれる呼び声がした。

「七瀬!」

ナナのことを七瀬と呼ぶ男の子、さっき話題に出ていた宮原天貴くん。

橋の前でナナのことを待っていたのか、あたしたちを見てすぐく声を掛けて来た。

「あのさ…っ」

この続きは聞かなくてもわかる。きっとあのジンクスを聞いてナナを誘いに来たんだ。

「私、小夏と渡るから!」

ほらナナだって何言われるかすぐに悟って、誘われる前に返事をしていた。

えー、でも違う!この展開は違う!

「七瀬、まだ俺何も言ってない!」

「言わなくていいよ!」

「なんでだよ、せめて言わせろよ!」

「聞きたくない!」

そうなのかな?

本当に聞きたくないのかな?

だったらどうして、そんな苦しそうな顔してるの?

本当は嬉しいんじゃないかなって、あたしにはそんな風に見えてる。

「行こうよ、小夏!」

「えっ」

行きの橋を渡った時みたいに、グイっと腕を掴まれた。

「待てよ、七瀬!」

天貴くんに背を向けて、あたしにも背を向けてる。
まるで顔を見られたくないみたいに。
あたしの腕を掴む手にはぎゅって力が入ってるのに。

…神様はもしかしてそのチャンスをもうくれてるの?
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