神様、この恋をよろしくお願いします。
「あ、じゃあ!相沢くんは…」

とりあえず喋って気を散らそうと思った。

ずっとドキドキ胸が痛いのはなんか嫌だ。

「ハーフ?」

見た目からして全部が全部ってわけじゃなさそうだし、半分くらいそうなのかなって思って聞いてみた。

「ハーフじゃなくて、クォーター」

「クォーター?」

「そう、母親がハーフ」

イマイチピンと来ていないあたしに委員長がわかりやすく教えてくれた。

「フランスの血が4分の1流れているんだよね」

あ、そっか。

1/4のことをクォーターって言うんだ。
相沢くんの1/4はフランスの血、じゃあつまりお母さんに半分フランスの血が流れてるってことは…

「おじいちゃんかおばあちゃんがフランスの人ってこと?」

「そうじゃね?どっちがフランス人かは知らねぇけど、母親いねぇし」

吐き捨てるように、最後の一文はそう聞こえた。

相沢くんにとってあんまりいい思い出じゃないのかな。
そうだよね…今だって委員長のお母さんが作ったお弁当食べてるんだ、少し考えたらわかったことなのに。

なんで聞いちゃったんだろ。

あ、じゃあお父さんは?

相沢くんのお父さんは…


“どうして家に帰らないの?”

“嫌いだから”


「………。」

それも少し考えたらわかることだった。

あたしは相沢くんのことをよく知らないから、知らないで何も言っちゃダメだよね。

あ、でも急にあたしが黙ったから変な空気流れてるかも!何か話題、振った方が…!
 
「あのっ」

「このあとの水族館も一緒に回らない?」

卵焼きは甘いの派?しょっぱいの派?っていうどーでもいい会話を投げかけようと思ったけど投げかけなくてよかった。

たぶん空気を呼んだ委員長が話を振ってくれた。

えっ!?
でもそれはなんか違う気がする!!

「帰りまで委員長の仕事ないし、勝手にどこか行かないでよ。水族館は一緒に見ようよ」

あ、相沢くんに言ったんだ…
てっきりあたしもかと思ってうろたえちゃった。

「行かない」

ごくごくと飲み干されたお茶と共に誘いも流されて行ったけど。

「なんで?一緒に見た方がいいでしょ」

「水族館は1人のが真剣に見れていいから」

「悠ってそーゆうとこあるよね」

どーゆうとこ?
どーゆうとこあるの?

幼なじみしかわからない会話なのかな…でも真剣に見たいんだ、水族館。  

興味ないって言ってたくせに。

可愛いじゃんか、そんなの。
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