神様、この恋をよろしくお願いします。
北館の奥の方、相沢くんが見たいと言ったシャチを見に。

「クジラとかサメも食べるんだって!知らなかった、案外アグレッシブ!」

水族館の大きな水槽をおおらかに泳ぐシャチは迫力があって、白と黒のコントラストもシュッとしてカッコいい。
断然イルカ派だったから今までしっかり見たことなかったけど、可愛い顔してるかも。

「………。」

チラッと隣を見れば、じっと水槽を見つめ真剣な表情をした相沢くんがいる。

水槽中を泳ぎ回るシャチの姿を瞬きもしないで追っていた。

…本当に見たかったんだなぁ。

1人で見た方がいいって言ってたのも本心だったのかも、その方が集中して見れるからって。

「……。」

「…。」

「……。」

ずっと話しもしないで見つめる相沢くんの横顔の方が気になって、何度もチラチラとバレないように見ていた。

どんな顔で見てるのか、その方があたしには興味津々なことだった。

ふいっと相沢くんがその場を離れた。

「え、どこ行くの!?」

「どこって…もう満足したから」

「だったら言ってよ、置いてかないでよ!」

「は、…お前に言う必要あるっけ?」

確かに…!

なかった、ただここまで一緒に来ただけで一緒に回ろうとは言ってなかった。なんかそんな流れかなって思てっただけで、別に約束はしてなかった。

1人じゃなくなったかもって喜んでたのはあたしだけだったよね。

「……。」

「…次あっち行くけど、来たけりゃ来れば?」

「いいの!?」

「まぁ、…俺でいいなら」

「行く!」

これで1人でじゃなくなるってこともあったけど、相沢くんと一緒に回れるのだってあたしはワクワクしていたんだけど。

だって不思議なんだ、相沢くんと2人になるとドキドキして心臓が鳴り始めるから。

考えても上手く出せなかった答えはいつ見付かるのかな…?
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