神様、この恋をよろしくお願いします。
「………。」

全部見透かされたような眼差しにドキッとして言葉が出てこなかった。

でもすぐに委員長はにこりと笑った。

「今日も来る気ないよね、学校にも来てないんじゃないかな。宝条さん言ってやってくれない?俺が言っても聞かないんだよね」

「…委員長が言って無理ならあたしが言っても無理だよ」

あたしの話なんか聞いてくれない、昨日だって目を合わせてだってくれなかった。 

昨日…、でもそれもあたりまえかもしれない。

「あたしのせいかもしれないの」

「え、何が?」

「今日来てないの、あたしのせいだと思う」

窓から入って来る風に吹かれながら廊下を歩く。

気持ちと繋がっちゃうのか、足が重く感じた。

委員長に昨日あったことを話した。

怖い先輩たちに呼ばれたこと、それを見てあたしは何もできなかったこと。

それが悔しくて、でもそれ以上に自分が嫌だった。

本当だったらナナたちを振り払ってでも助けに行けた。

だけどそれをしなかったのは…

しなかったんじゃない、できなかっただけ。

自分を守っちゃったの。

「あたし最低だよね…」

「そんなことないよ、それが普通だよ」

委員長の声は穏やかで、うんうんと優しく聞いてくれた。

「どうすればよかったのかな?あたし、どうすればいいのかな…」

「何もしなくていいよ」

「え?」

「何もしなくていい、朝学校に来たら“おはよう”って言って、帰る時には“また明日”って言うだけでいいよ」

あたしと目を合わせ、委員長がにこりと微笑んだ。

「それだけでいいよ」

もうすぐチャイムが鳴る頃、理科室に着いた。

委員長が引き戸のドアに手をかける、あたしの方を見ながら少しだけ悲しそうな瞳をして。

「悠は足りないものが多いから」

「それって…」

聞き返そうとした時、チャイムが鳴った。

あわてて理科室に入ることになって続きを聞けなくて、授業中ずっとその言葉が頭の中でループしてた。
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