神様、この恋をよろしくお願いします。
「…っ」

ピクッと悠の眉が動いた。

不自然に、何かを見て驚いたみたいだった。

何、どうしたの…?

「…。」

悠の視線はあたしを通り越して向こう側を見ていた。

同じようにその視線の先が見えるように振り返った、時だった。


スッ、と通り過ぎた。


え………?

スーツを着た男の人、キリッとした目元が悠に似ていると思った。

なのに悠のことさえも見ていなかった。


今のは…お父さん?

じゃないのかな?


“空気みたいなもんだからな”


本当にそうだった。

言っていた通り、それはあたしの想像していたものとは全然違って。


今の…、何?


スーツの男の人はそのままスタスタと一度も振り返らないで行ってしまった。 

その背中はすぐに見えなくなった。

「待って、悠っ」

悠があたしの隣を抜けていく。
悠もまた、あたしのことを見ていなかった。

「ねぇ、悠!ねぇってば!」

何度呼んでも聞いてくれなくて、どれだけ大声で呼んでも立ち止まってもくれなかった。

「悠…っ」

ねぇ、なんで?

どうして…?

せめてあたしの話だけでも聞いてほしいのに。

言いたいことがいっぱいあったんだよ…
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