神様、この恋をよろしくお願いします。
1時間目の授業が終わった後、こっそり体育館裏まで走った。
相変わらず教室には来てなかったから、あそこには来てるかなって2時間目をサボるつもりで会いに行った。

「あ、起きてた!」

「…今起きた」

「おはよう!」

「…はよ」

まだ眠そうな目をしていた悠はいつもの階段に座って、頭を掻きながらスマホをいじっていた。その隣にちょっとだけくっ付くように座った。

「スマホ、学校に持ってきたらいけないんだよ」

「へぇ、そーなんだ」

「…知ってたでしょ」

トントンと何か見てる。

何見てるのかな。

てゆーかあたしも知りたいんだけど。

「ねぇ、連絡先…教えてほしい」

ドッドッって心臓が鳴る。

こんなことでもこんなに緊張するんだ。

「ん」

「え?」

スマホを見せられた。

画面にはQRコードが表示されてる。

「あたし学校に持ってきてないから!」

「え、じゃあ今言うから」

「言われても覚えられないよ!」

「……。」

眉にしわが寄っている。

この顔にはだいぶ見慣れて来た気がする…

「じゃあ手」

「手?」

先に悠が手を差し出したから、その上に乗せるように手を置いた。

手から伝わる悠の温度にドキドキが増していく。

繋いだことあるけど、あの時と今じゃ全然違って。

熱い。

どうしよう、手汗が気になっちゃう。 

悠がごそごそとリュックの中から出て来た油性ペンの蓋を両手がふさがってることもあって口で開けた。

ペンの行く先はあたしの手、一文字ずつ付け加えられていくアルフェベット。

無言の時間が余計にドキドキした。

手が震えちゃうんじゃないかって自分の手ばっかり見ちゃった。

だって悠の手のひらは冷たくて、あたしが全部体温奪っちゃうかと思った。

「これ、ID」

書き終わると離された手が少しだけ寂しい気持ちになったけど、手の甲に書かれた悠の字にあたしの心臓はずっと鳴り続けてた。

「“orca_you”…?」

「そ、検索して」

orcaってどーゆう意味なのかな?
まだ習ってないよね。

「…てゆーかこんなとこに書いたら悠の個人情報ダダ漏れだよ?」

「小夏以外は拒否るからいいんだよ」

使った油性ペンを無造作にリュックの中に投げ入れた。

…ここは喜んじゃってもいいよね?いいんだよね?

顔が熱い。

どうしよう、隠せないかも。

悠はあたしのことどう思ってるの? 

「ねぇ、悠っ」

「ん?」

「あたしたちって…っ」

付き合ってる?

たった一言、3秒もかからないのに。

「何?」

なんで聞けないのかな。

「…なんでもない」

あたしのいくじなし。
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