神様、この恋をよろしくお願いします。
悠のお母さん…、真菜さんに誘われておしゃれなカフェに入った。

学校帰りにこんなとこ来るの初めてかも。
ここって変なとこに入る?
大丈夫かな…っ

「こなっちゃん何飲むー?」

「え、えっと…」

「ジュース?オレンジか、りんごか」

「じゃありんごでお願いしますっ」

4人掛けのテーブルに、悠の隣に座った。悠は何も言ってなかった。メニューも見ないでずっと黙ったままだった。

「りんごジュースとコーヒー2つで」

えっ、コーヒー!?
2つってことは悠もコーヒー?

「悠はブラックしか飲まないんだよ」

明らかに顔に出てたあたしに真菜さんが教えてくれた。

そうなんだ…、あたしはカフェオレも飲めないのに大人だなぁ…

「ねー、最近何してんの~?」

「…別に」

「私ヒマなんだよね!」

「へぇ」

…お母さんって言ってたよね?

お母さんと息子の会話にはどうしても思えないけど。でも家庭はそれぞれだし、これが悠のところでは普通なのかもしれないけど…

“母親いねぇし”

なんであんな風に言ったのかな。

「あいつとも別れて、1人だし」

…これは普通の会話には全然聞こえないんだけど。

悠の方を見ると平然と届いたコーヒーを飲んでいた。絶対苦いのにそんなこと感じさせない顔で。

さっきだって、修羅場かどうのこうの言ってた。絶対あたしが聞いちゃいけない話だよね。

「こなっちゃんも大変だったんだってね、ごめんね」

「え、いえ、全然…っ」

話がここに来る前の話に戻った。それも聞いていいかわからない怪しい話だった。

「彼氏に別れたいって言ったらこじれにこじれてバックれたら悠のとこ行っちゃったみたいで、こなっちゃんにも迷惑かかってごめんね!」

「え、いえ…いえっ!?」

声がひっくり返っちゃった。

情報過多っていうか、情報難易度高すぎて。

修羅場と聞いた時点で嫌な気しかしなかったけど、今ハッキリ聞こえたのは世間的にもあれなやつじゃないの…?

目をパチパチするあたしを見て真菜さんがあ!っと何か気付いたようにあっけらかんと笑った。

「別に不倫とかじゃないよ!離婚して今フリーだから!」

ケラケラと笑ってる。

めちゃくちゃ口開けて笑ってる。

笑っていい話なの?それは…

「悠は今日の夜ヒマ~?」

「…暇だけど」

「じゃあご飯行こ♡久しぶりに♡」

「…いいけど」

「やった♡」

机の上に両腕をついて頬杖をつきながら上目遣いで、まるで悠の彼女みたいに。
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