神様、この恋をよろしくお願いします。
「じゃあ、私日直だから先行くね!」

「うん、ありがとね」

本当は今日の日直なのはナナで、咄嗟にあの場を離れるためにあたしが日直だってことにしてくれた。

ナナが階段を駆け上がって行くのを見て、ゆっくり一歩足を上げた。

「はよ」

「…!?」

後ろから聞こえた声に、足がピタッと止まった。

そんなこと言ってくれると思わなくて。

「悠…!」

いつもあたしから言ってたから。

「おはよう!来てくれたんだ!」

「LINE来たから」

昨日考えた一番言いたかったこと。


“明日教室で会おうね!”


ちゃんと見てくれてた。

あたしが言ったこと、叶えてくれた。

「じゃあ返事してよ!」

「したけど、さっき」

「そんなの見えるわけないでしょ!あたしが学校来る前にしてよ!」

きょとんとした悠はなぜか不服そうだったけど。

でも、ほらこんな些細なことで嬉しくなるの。

この気持ちは簡単にはなくせないよ。

「今日は授業受ける?」

「あぁ」

「え、素直じゃん!」

「“そーゆうもん”なんだろ?」

あたしの横を通り越して階段を上がって行く。

悠ってなんかちょっと、いやだいぶ、そーゆうことわかってないよね?

「………。」

でも、まぁいいか。

来てくれたし、あたしが変えられるかもしれないし。

そうできたらいいよね。

そしたらナナだってみんなだって先生だって、変わっていくかもしれないもん。

「小夏、置いてくぞ」

少し上から悠があたしの名前を呼んだ。

簡単に手放したくないよ。



離さないよ。



「うん、待って!一緒に行く!」
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