神様、この恋をよろしくお願いします。
「なんで!?」

びっくりしてつい大きな声まで出しちゃった。
だけど相沢くんは顔色ひとつ変えず、てゆーか全く動じずあたしのことなんか見えてないのかと思った。

「……。」

「………。」

「…。」

お互い無言の時間が気まずい。

目は合ってるのに、それ以上何もない。

それにしても、見れば見るほど透き通るような青色の瞳はキレイだった。

何色なんだろう?

青よりは薄くて、水色よりは濃い。 


相沢くんだけの色、そんな瞳だった。


カラコンなんだけど。

「なんでって…」

相沢くんがゆっくり口を開いた。

変なこと言っちゃったのかも!

やばい、どうしよう!怒られる!?

さっき“なんで!?”って言っちゃったのは、帰ったと思ってたのに“なんで”ここにいるの!?って思ったからで、余計なこと言わなきゃよかった。
だけどこんな体育館裏で、何してんのかなって、気になっちゃったんだもん。

「何が?」

「え?」

なのに、眉にしわを寄せた相沢くんは不思議そうにはしていたけど怒ってはなかった。

「何が…って、どうしてここにいるのかなーって思ったから。帰ったんじゃなかったのかなって」

だからあたしもついそのまま思ったこと言っちゃった。
そしたらさらに相沢くんの眉にしわが集中した。

「…え、お前誰?」

今それ!?
散々顔合わせといて、このタイミングで聞くの!?

てゆーかっ

「同じクラスの宝条小夏!」

「あぁー…知らねぇけど」

知られてないことはわかってたけど。

こっちから見たら相沢くんは目立つし、有名だし、嫌でも目に入るし、そんな存在だけど…

あたしはこれといって言うこともない一般的生徒。

「…2時間目からずっとここにいたの?」

「……。」

あ、これは相沢くんお得意の無視…!?

そうだよね、本郷先生とも話さないんだからあたしとも話すわけないよね。テキトーに話終わらせてみんなのいるところに戻ろう。

「…2時間目つーか、朝からいたけど」

「え?」

終わらせて戻りたかったのに、相沢くんが話すたび気になるワードが多すぎて全然この場を離れることができなかった。

「え、朝からいたって…だって遅刻して来たじゃん!?」

「遅刻はしたけど、ずっとここにはいた」

「…なんで?」

また質問が戻っちゃった。

だって私にはよく理解できないことだったから。

「別に、意味なんかねぇけど」

意味ないんだ!
じゃあ教室来ればいいのに!

って思ったけど、それはさすがに言えなかった。

教室にいても相沢くんは楽しそうじゃないし、あたしに誘われたところで来る気にもなれないよね。

「そっか…、じゃああたし戻るね!」

もうすぐ掃除も終わる、そう思ってやっとこの場から離れられると思った。

「あー、いたいた!金髪!」

あたしが来た道とは逆の方から声が聞こえた。


金髪、って絶対相沢くんのこと。


その呼び方はなんか嫌な予感しかしなくて。

「お前何やってんだよ?」

その嫌な予感は的中する、相沢くんよりは落ち着いた髪色をしていたけど着崩した制服が物語ってる。

怖いって言われてる先輩たちだ…!

3人でずらずらとこっちに近付いてくる。

こんなシーン、漫画で見た気がする。

怖い先輩たちが寄ってきて、ちょっとツラ貸せよみたいな流れになって、ボッコボコにされるみたいなあれ!きっとあれだ!

「何って…」

相沢くんが立ち上がった。

怖い先輩たちは近くまで来てる。

あたしどうしたらいい?
止めた方がいい?
でもどうやって?

たぶん相沢くんが何か言おうとした。

でも言う前にどうにかしなきゃいけないって思った。

「相沢くん…!掃除もうすぐ終わるから行こう!!」

勢いのまま相沢くんの腕を掴んだ。

そのままなるべく先輩たちの顔を見ないよう下を向いて、グイッと引っ張って走った。

「は!?おい…!」

思ってたよりも細かった相沢くんの腕はあたしの手にも収まるぐらい華奢だった。
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