神様、この恋をよろしくお願いします。
1日が終わる、一度も悠は教室に来なかった。

てゆーか学校には来てるのかな?

体育館裏には行ってないし。

行けなかったから、ちょっとだけ怖くて。

今日は一緒に帰れないのかな…


「あ」


帰ろうと思って下駄箱でスニーカーに履き替え、玄関を出た時だった。
そーいえば何度かここで会ったことがあった、同じように帰ろうとする悠に。

「…来てたんだ」

「毎日来てるから」

「そうだよね」

つい隣に並んでしまって、一緒に帰ろうって言ったわけでもないのに。
でも悠も何も言わないから、歩幅を合わせて歩き出した。

「なんで今日来なかったの?」

「別に」

「あたしに…会いに来てくれるんじゃなかったの?」

「………。」

なんで何も言ってくれないの?

近付いたと思っていた距離は今どれぐらい離れてるのかな。

もう近付けないのかな…

「俺といると本郷せんせーに怒られるぞ」

「え?」

あたしより少しだけ先を歩く、初めて歩くのが早いことを知った。
いつもはあたしに合わせてくれてたんだ。

「いいよ!あたしは全然いい!」

「よくねぇだろ」

「一緒に怒られてくれるなら!」

「嫌だよ、めんどくせぇ」

本当にそんなことどうってことないのにな。
そりゃ本郷先生は怖いけど、そんなの平気だよって簡単に言えちゃうのに。

「…めんどくさいだろ?」

「全然」

「離れて行けよ」

「離れない」

悠はそうじゃないの?

「まだ…別れるってあたし言ってない」

「別れたくなるから、絶対」

「…ならないよ」


だってあたしは悠がいい。

悠がいいの、それだけだよ。

悠の本当の気持ちを聞かせてよ。

まだ一度だって教えてくれたことないよね?


いつもより無言の時間が長くて、一緒にいられるだけで嬉しかったはずなのに歩けば歩くほど終わりに向かってる気がしていた。

いつもは隣を歩いていたのに、今日は悠の後ろを歩いてる。

キラキラの髪が揺れる後ろ姿を見ながら。

もうすぐ曲がり角、悠と別れる曲がり角―…
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