神様、この恋をよろしくお願いします。
降り始めた雨は気付けばザーザーと音を立てるほど土砂降りになっていた。

室内にいても雨の音が響く、カミナリが鳴ったら嫌だから早く帰らなくちゃ。

って思ってたんだけどさすがにあれだけ泣いた後、恥ずかしくてトイレでひっそり隠れてたら遅くなっちゃった。

ナナは待っててくれるって言ったけど、天貴くんもいるし先に帰ってもらった。

1人で帰るぐらいできるし。

顔洗って、教室に戻ろう。

もういい加減みんな帰ってると思うし、サッとリュック持って帰るんだ。

「宝条さん、まだいたんだ」

と、思ってたのに同じようにまだ帰ってない人がいた。

「委員長!委員長もまだだったんだ」

帰ろうとしてたのか立ち上がり、リュックを手に持とうとしていた。

「うん、ちょっと職員室行ってたから」

「そっか」

…大丈夫かな、あたし。
さっき鏡見た時はだいぶマシだったけど、変な顔してないかな。

「というか、宝条さんのこと探してたんだ」

「え、あたしを?何かあった?」

「よかったよ、まだいてくれて」

「…?」

窓に雨が当たる、大粒の雨は力強くてバシバシとガラスにぶつかって来た。

委員長が視線を下ろし、小さく息を吐いた。

「ここずっと悠と連絡が取れなくて…、電話してもLINEしても。宝条さん何か知らないかと思って」

「あたしも…、あたしは連絡もしてないから…」

委員長にも何も言ってないんだ。

真菜さんといるのかな?
あれからずっと真菜さんと…

「…宝条さんならなんとなく知ってるかなって思ったんだけど、宝条さんも知らないならわからないか」

「あたしは、そんなんじゃ…っ」

「ありがとう、じゃあまた明日ね」

寂しげに微笑んだ委員長がリュックを背負って教室を出て行こうとした。
 
電気を切った教室は薄暗くて、雨の音が余計気になった。

「委員長待って!」

「何?」

思わず引き留めた。

あたしより委員長の方が絶対悠のことを知ってる。

あたしにはわからないことも絶対知ってる。

「あのっ、悠とまっ…お母さんってどんな関係なのかな?」

「え?」

「あのねっ、何回か会ったことあるんだけど!友達みたいっていうか、仲良いのかなーとは思うけど」

「宝条さん、会ったことあるんだあの人に」 

あの人、そんな言い方をした委員長には少し違和感で。

「うん…、悠は利用してるだけだって…」

お母さんを利用してるって、でも真菜さんもそんな感じで、それってどんな関係なのかな。

利害の一致ってやつ?

難しい言葉はよくわからない。

「そんないい関係じゃないと思うけどね俺は」

はぁっと息を吐いた委員長が、一度下した視線をあたしの方に向けた。

「なんで悠はあの瞳と髪色をしているんだと思う?」

「…どーゆう意味?」

「生まれつきとは言えあれだけ先生に言われてるしクラスメイトにも怯えられてるし本当に嫌なら、染めることだってできる。それこそカラコンだって使えばいい」

「……。」

「でもそれをしない理由が悠にはあるんだよ」
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