神様、この恋をよろしくお願いします。
「宝条さん…っ!」

すでに開いていた進路指導室のドアからやっとやって来た。

「委員長~~~~!どこ行ってたの!?遅い~~~~~!!!」

「ごめん、井川先生呼びに行ってた!」

その後ろにいっちゃんがいた。

あと、悠のお父さん。

「本郷先生、相沢くんのお父さんを呼んできましたよ」

コツコツと音を立てながら悠のお父さんが進路指導室に入って来た。

ピシッと着たスーツ姿はあたしを緊張させた。

「息子が失礼しました」

悠より全然もっともっと低い声だった。

「今日は息子の素行の悪さについてだと伺っております」

さっきとは全く空気が変わった。

しーんとした張り詰めた空気にあたしの涙も止まった。

悠は俯いていた。

「…そうですね、再三注意しても聞かないもので。その瞳も髪の色も、他の生徒に示しが付かないんですよ。勝手なことをされては、ここは学校、教育の場ですからね」

本郷先生がスラスラと話してる、さっきあたしたちを見る目とは全然違っていた。

どっちでも最悪だけど。

だってそれは悠悪くないもん。

「…はい、その通りです」

なのに、どうしてお父さんまでそんなこと言っちゃうのかな。

ずっと俯てる悠が今どう思ってるか、なんでみんなわからないの…

「何度も本郷先生から指摘され、何度も指導して頂いたと、先ほど井川先生よりお聞きしました。瞳のこと、髪のこと、何度も…」

……。


「息子は否定したとも」


………え?


今、…?


「以前もお話したはずです、生まれつきのものだと」

ちゃんと話してくれててんだ、お父さん。

じっと本郷先生を見る悠のお父さんの瞳の色は違ったけど、やっぱりよく似ていた。

「本郷先生、僕も何度もお話しましたよね。嘘なんて付いてないって」

そーえいばいっちゃんは瞳のことや髪の色のことで悠に怒ったことなかった。

なんだ、わかってくれる人は他にもいたんだ。

信じてくれてたんだね。

「だから、本郷先生。相沢くんに謝ってください」

本郷先生はバツの悪そうな顔をしていた。

まさかこんなことになるとは思ってなかったんだと思う。いつも頭ごなしに決めつけて、誰の前でも怒ってたから。

「ここは学校、教育の場ですからね」

いっちゃんにそう言われて、頭を下げる本郷先生が見られるなんてあたしも思ってなかった。
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