夫の一番にはなれない
「お疲れ様です。お先に失礼します」
一旦職員室によってから、帰宅するのがわたしの日課でもある。
部活が終わって、完全下校になってから帰宅するから、毎日終わるのは18時30分くらい。
それでも、職員室には毎日多くの先生が残ってい仕事に追われていた。
「お疲れ様、奈那子先生。新婚なんだから、滝川先生と一緒に帰ればいいのに」
「でも、忙しそうですから」
ちらりと來に目を向けると、部活が終わってまだジャージ姿のまま家庭連絡をしているところだった。
先日、来のクラスの女子同士で問題があったらしく、一人の生徒がここ数日不登校となってしまったのだ。
そのため、最近は特に電話連絡を密に行っているようで……
家に帰ってくるのも遅いのだ。
「滝川先生、意外と熱血だものね。でも、滝川先生はいいわね。家に帰ったら、奈那子先生がおいしい夕飯を作って待っていてくれるんだから」
わたしはただ、愛想笑いを返すしかなかった。
ここにいる先生も、わたしたちが普通に仲の良い夫婦だと思っていることだろう。
わたしたちがお互いに素っ気なくしているのも、ほかの先生方に気を使わせないためだと思っているに違いない。