夫の一番にはなれない
でも、この契約上の妻もあと数か月で終わりを迎えようとしている。
來はどうやって家族や上司に伝えるつもりなのだろう。
一向に変化のない夫婦生活が淡々と過ぎていくだけ――
そろそろわたしは、一人暮らしに戻る準備をしなくてはいけないかもしれないと考え始めていた。
何もなかった結婚生活が終わりを迎えようとしている。
ただそれだけのこと。
本当に彼を愛していたのなら、終わりを迎えようとしている今、こんなに無心でいられるはずがない。
「――――っ」
ウソだ……
無心でいられるはずがなかった。
無意識のうちに涙が流れていて、スマホの画面がにじんでいく。
わたしたちは契約上の夫婦だったはずなのに。
どうしてこんな気持ちにならないといけないの……
切なくて、苦しくて、悲しくて、つらい。
この時のわたしは、まだこの気持ちの正体に気づいていなかった。