夫の一番にはなれない
「俺たち、結婚しませんか?」
この提案をされたのは、わたしたちが再会した時だった。
もう会うことがないと思っていた人と、偶然立ち寄ったカフェで顔を合わせることになったのだ。
「あの……この間の方ですよね?」
しかも驚くことに、來の方からだったんだ。
声をかけてきたのは――
「あ、あの時の……その節はありがとうございました。お恥ずかしい姿も見せてしまって」
「いえ、俺の方こそ。こんなところで再会するなんて思ってもみませんでしたよ。ここへはよく来られるんですか?」
「時々来ますよ」
「そうなんですね。雰囲気良いですよね、ここ。あの、ご一緒してもいいですか?」
「ええ、この前のお礼にコーヒーおごらせてください」
わたしたちの再会は、意外と早くにやってきて、2回目とは思えないほど会話もスムーズだった。
初対面ではあまり來のことを気に留めてはいなかったけれど……
カフェで会ったときの印象は、見かけによらず柔らかい物腰の人だということだけだった。
「あの、こんなこと聞くのもあれかと思ったんですが……」
「なんですか?」