夫の一番にはなれない
「俺としても、彼女には早く結婚してもらいたいんです」
「え?」
「あの……そこで考えたんですが」
彼から“彼女には早く結婚してもらいたい”という言葉が出てくるとは思わなかった。
そうとう傷ついているはずなのに。
彼女の幸せを祈っているなんて――
わたしには到底理解できない。
わたしは、あんな男と別れられてもう清々しているというのに。
目の前のこの人は――
今も元カノのことを忘れられないというの……?
「俺たち、結婚しませんか?」
彼から結婚を提案された時は、何かの冗談かと思った。
でも、彼の姿は真剣そのもので、最終的には「結婚してほしい」と懇願してきたのだ。
どれほど彼女のことが好きだったんだろう。
どうして、彼女の幸せのためにここまで自分を犠牲にできるのだろう。
不思議でならなかった。
このときのわたしは、好奇心から返事をしていたのかもしれない。
「その提案、お受けします」と――