夫の一番にはなれない
第2章 2人の距離感
わたしたちの朝は毎日忙しなくやってくる。
と言っても、來に比べればわたしの朝はのんびりしている方だと思う。
朝の6時に起床し、7時15分には家を出る。
わたしはいつも7時前には家を出る來を見送っているのだ。
「行ってらっしゃい。またあとで」
「ああ、またあとで」
一緒に行けば車1台分の交通費で済むのに、今日もわたしたちはバラバラに家を出る。
せっかく同じ職場なのだから、夫婦そろっての出勤もあこがれはあるのだけれど……
残念ながら、わたしたちはそんな関係ではないし。
「おはよう、奈那子先生」
出勤すると、保健室で待ち構えていたのは、主に2年生の国語を担当している早川美千恵先生だった。
彼女は1つ年上だけれど、この学校ではわたしと同期に当たる。
数少ないわたしの友人の一人だ。
「早川先生、早いね。どうしたの?保健室で」
「相談したいことがあって、待ってたのよ」
保健室は生徒のためだけの相談室ではない。
こうして先生も保健室を利用してくれるのだ。
お陰でわたしは生徒からも先生からも様々な情報が入ってくる。
その情報欲しさに、よく顔を出す先生もいるくらいだ。