夫の一番にはなれない
わたしには付き合って、5年になる彼氏がいた。
大学卒業してすぐに付き合い始めて、そろそろ結婚を意識し始めたころ。
急に呼び出されたわたしは、プロポーズをされるかもと期待に胸を膨らませた。
でも、呼び出されたのはムードもない近くのファミレス。
「ななちゃん、大事な話があるんだ」
わたし、横井奈那子の名前を呼んだ、彼――溝口望は真剣な顔をしていた。
これは絶対にプロポーズじゃない。
そう息をのんだとき、彼の背後から女性の声が聞こえてきたのだ。
「來くん、大事な話があるの」
話の切り出しは望と同じ。
嫌な予感がした。
「ごめん!ななちゃん!俺と別れてほしい!」
「來くん、私と別れてほしいの!」
何を言われたのか、よくわからなかった。
今、わたし、別れを切り出された……?
もう28歳になって、そろそろ結婚の話が出ると思ったのに。
将来は望と結婚するものだと、思っていたのに。
「望、どうして……別れてなんて……わたし、何か悪いことした?」
「違う……ななちゃんは何も悪くない。悪いのは俺なんだ」
「どういうこと……?」
「浮気した」