夫の一番にはなれない
全く知らなかった。
來がこの学校に赴任してきて、もう2年になるというのに。
初めて聞かされた事実に、胸が苦しくなった。
早苗さんも保健室から出ていくと、長谷川先生が優しくわたしを見て笑っていた。
「もしかして、早川先生、知ってたの?」
「ええ、もちろん。ずいぶん愛されちゃって羨ましいなあと思ってたのよ。まあ、当の本人は全然気づいていなかったようだけどね」
早苗さんも早川先生も“愛されている”と言ってくれたけれど……
それは全然違うんだ。
さっきまで久しぶりにドキドキして気分が高まっていたのに、一気に沈んでしまった気がした。
でも、わたしたちは外では仲の良い夫婦を演じなければならない。
だから、これでよかったんだ。
新婚で、旦那さんから愛されている妻になったのだから。