夫の一番にはなれない
2週間に1度、わたしには土曜日に行っている趣味があった。
それは映画鑑賞。
この趣味は大学生の頃からずっと続いていて、月に2回様々な映画を楽しんでいる。
昔はよく付き合っていた彼氏と行ったものだったけれど、最近は一人で行くことが当たり前となった。
今は時々早川先生と行くくらいで、あとは一人で映画鑑賞をしている。
「じゃあ、來。行ってくるね」
「ああ、行ってらっしゃい」
きっと來はわたしがこれからどこに行くかなんて、知らないだろうな。
興味もないのかもしれない。
だって、1度も「どこに行くのか?」と聞かれたことがないのだから。
土曜日は昼前に出て、映画館の近くで食事をする。
そのあと映画を1本見て帰宅するのが、わたしの休日の過ごし方だった。
この日も、近くの和食屋さんで食事を済ませてから、米国No.1のファンタジー映画を1本見た。
そして、そのまま何事もなく帰宅するだけだった。
それだけだったのに……
「ななちゃん?」
今でも忘れられなかった、あの声――
心臓の奥をえぐられるような、そんな気分になったのは久しぶりだった。