夫の一番にはなれない
「……え?」
浮気した?望が……?
こんなに衝撃を受けたのは、生まれて初めてかもしれない。
そのあと、望は言い訳をダラダラと並べていた気がする。
でも、わたしの耳には何も入ってこなかった。
「ごめん、ななちゃん。ななちゃんより大事にしたい人ができた」
1年前のちょうどこの時期に、望と旅行に行った。
金沢に行った旅行で、望は「ななちゃんと結婚出来たら幸せだろうな」とプロポーズめいたことを言っていた。
たった1年しか経ってないのに。
たった1年で、誰が望の心を変えてしまったの……?
「來くんよりも好きな人ができたの」
また望の後ろに座る女性の声が聞こえてきた。
どうしてだろう。
なぜかわからないけれど、だんだん冷静になっている自分がいた。
「いつから?いつから浮気してたの?」
「それは……」
「考えてみれば、この2ヶ月連絡ほとんどくれなくなったよね。そのころから?」
「……1年前」
1年前――!?
そんなに前から!?
黙っていればバレなかったのに。
でも、望という人はそういう男だった。
ウソがつけない男で、誠実でまっすぐな男。