夫の一番にはなれない
來に手料理を食べてもらいたいという気持ちを少なからずあったけれど、そこまで欲を出してはいけないと思った。
わたしたちは本当の夫婦ではないのだから。
「やっぱり早く家探さないといけないよね」
買い物に出かけた來の目を盗んで、わたしはまた物件を探し始めた。
今はスマホから何でも検索出来て、とても便利になったなあとつくづく感じる。
「ただいま。奈那子、どっちの弁当がいい?」
來が戻ってきたのは案外早くて、結局気に入ったアパートは見つけられないまま。
スマホを持ったまま、來が買ってきてくれたお弁当を中身を覗き込んだ。
「ありがとう、來。來はどっちがいい?」
「俺はどっちでも。奈那子が好きな方を選べばいい……って何見てんの?」
「え?」
特に見せびらかしたかったわけではない。
ただ、さっきまで物件を探していたことをすっかり忘れていただけだった。
來の視線がスマホの画面に注がれているのに気づくまで、すっかり忘れていた。