夫の一番にはなれない
第3章 偽りの夫婦



「今、中島さんのお母さんがお迎えに来て、帰りましたよ。これから病院に行くそうです」


微熱で早退した生徒の担任の先生に報告を済ませるため、職員室に顔を出した。

いつ生徒が来るかわからないから、あまり長時間保健室を開けることはまずしないのだけれど……


必要最低限の報告をしに、職員室に一日に数回職員室にやってくる。

内線で伝えてもよいのだけれど、職員室と保健室は近いから直接来た方が早いのだ。


「ありがとう、奈那子先生」


そして、ほかの先生たちはわたしと來の生活に少し興味があるようで、時々詮索をしてくるときがある。

きっと來が何も話さないから、わたしにそのしわ寄せがやってくるのだと思う。


「ねえ、奈那子先生。この前、滝川先生と偶然会ったんだけどね。“川柳”っていうお弁当屋さんの前で」

「え?そうなんですか?」


全然知らなかった。

來は何も話してはくれないから。


お弁当屋さんで会ったというのは、きっとこの前の時だ。

わたしにもお弁当を買ってきてくれたとき、ちょうど買ってきてくれたお弁当は“川柳”のものだったから。




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