夫の一番にはなれない



そんなことを考えながら、時間が経つのが遅く感じる食事会が、ようやく終わりを迎えようとしていた。


「無理言って来てもらったので、ここは俺たちが」


そう言って、気前よく男性陣がおごってくれると、連絡先を交換できて上機嫌な早川先生と目が合った。

交換をしてくれたということは、向こうにも彼女がいない可能性が高いし、早川先生チャンスかもしれない。


「あ、そうだ。滝川先生」

「はい?」

「もし、お知り合いの方が興味持ってくれたら、連絡もらってもいいですか?」

「あ、はい。もちろん」

「俺の番号伝えておきますね」


そう言って、名刺の裏に携帯番号を書いて渡してきた。

わたしはてっきり学校に連絡すればいいものだと思っていたけれど……

交換をするわけではないから、一応もらうだけはもらっておこうとそれを受け取った。


「滝川先生、帰りは?旦那さんが迎えに来てくれます?」

「あ、いえ」

「だったら、送っていきましょうか?俺車で来てますから」


この人がなんの下心もなく、言ってくれたことは伝わってきた。

でも、わたしは断る以外の選択肢を持ち合わせていなかった。




< 51 / 70 >

この作品をシェア

pagetop