夫の一番にはなれない
「あのね、センセイ。この前、大樹の誕生日だったから、手作りのケーキを作ってあげたんだけどね」
幸さんの言い分はこうだった。
彼氏の誕生日にはりきって手作りのケーキを作ったら、あまり喜んでもらえなかったと言う。
しかも「前に作らなくていいって言ったじゃん」と渋い顔をされたらしい。
「ね!ひどいと思わない?私、一生懸命作ったのに」
「そっか。その言葉に幸さんは傷ついたんだね。ねえ、大樹くん。どうしてそんなこと言ったの?」
「だって、俺は前からいらないって言ってたんだ」
「もしかして、甘い物嫌いなの?」
「そうじゃない」
結局大樹くんは、それ以上何も言ってはくれなかった。
きっと彼の中には、あんな言葉を言ってしまった理由が何かあるはずなのに。
言いたくない理由なのか、それとも――
ちらっと來を見ると、真剣な表情で大樹くんを見つめていた。