身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
もしも願いが叶うなら、家族三人で過ごしたいと心から思っていた。そのチャンスが今、目の前にある。
しばし悩んだものの、手を伸ばしたい欲に負けた弱い私は、本心に従って「行きます」と答えていた。
嘉月さんとお別れする際、私はマンションに置いてあった私物をすべて片付け、自分の痕跡を消した。
スマホも同じく、朝陽くんに頼んで連絡先やこれまでのメッセージの履歴を消してもらっていた。彼なら、うまいこと嘉月さんのスマホを拝借して操作することもできるだろうと考えて。
婚約破棄の件も含めて話した時、朝陽くんは『本当にそれでいいの?』と私に何度も確認した。彼だけは『別れたらダメだよ』と言い続けてくれていたが、私にはそれ以外のいい方法を見つけられなかった。
結局、朝陽くんにもいろいろと協力してもらって今に至るわけだけれど、まさか再び連絡先を交換する事態になるとは。
お花見は四月最初の日曜に決まり、昴には『ママのお友達も一緒に行っていい?』と聞いて納得してもらった。
その前日となった今日はひとりそわそわしている。せっかくだから三人で食べるお弁当を作ることにしたのだ。