身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「あー、うん。たまには親子水入らずで見に行きたい気分なの」
「そっか。……にしてはおかずの量が多い気が」
一誠さんはフライパンの中や作りかけの食材たちを覗き込み、不思議そうに言った。
いつもわりと鈍い人なのに、どうしてこういう時だけ鋭くなるのかな!
「つ、作り置きです、作り置き! 私だって主婦っぽいことするんだから」
「うんうん、わかってるよ。そんなにムキにならなくても」
「ちなみに、このことは誰にも内緒ね! 誰かに言ったらもうビール禁止だからね!」
「なんで!?」
意味不明な私に一誠さんは戸惑いまくっていたものの、ひとまず口止めすることはできた。バレるのも時間の問題のような気がするけれど。
翌日の午前十一時、天気がよく絶好のお花見日和となった今日、おかずとおにぎりを詰めた重箱を持って北千住駅の広場へ向かった。
すでに待っていた嘉月さんはニットにチノパンというカジュアルな服装で、久々に見た休日スタイルにもキュンとしてしまう。
三十二歳になっても本当に変わらないなと思いつつ、昴の手を引いて彼に歩み寄る。