身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 肩車をしてもらうのも初めてに近い昴は、普段の目線とは全然違う景色に「わぁ~っ」と感動した声を上げ、目をキラキラさせている。

 どうやらお気に召したようなので、それからしばらく肩車をして歩いた。昴はとっても楽しそうで、下ろしてもらうと自分から「ありがと!」とお礼が言えた。

 ……嘘みたいに幸せだ。嘉月さんがいて、昴が笑っている。これだけで他にはなにもいらないと思えるほど。

 本来ならすでに手に入れているはずだった幸せがすぐそこにあると思うと、切なさや希望が絡み合って胸がぎゅっと締めつけられた。


 汐入公園に着くと、緑の芝生が敷かれた広場にレジャーシートを敷いて、重箱を囲んで三人で座った。蓋を開けて出てくるのは定番のおかずだが、一応彩りはよくしてきたつもり。

 それを見下ろしたふたりは「お~」と声を上げる。


「お口に合うといいんですけど」
「すごいな。うまそう」
「からーげ!」


 子供みたいに目を輝かせる嘉月さんと、大好物の鶏のから揚げに喜ぶ昴。すでに作った甲斐があったなと満足しつつ、皆でいただきますをした。
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