身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
嘉月さんにとって私はただの店員でしかなかったはずなのに、寂しいと思っていたの?
意外な話に目を見張ると、彼の綺麗な瞳が私を捉える。
「話すようになる前から、都さんの笑顔を見るたび癒やされていた。後になって気づいたよ。ヱモリに通っていたのはコーヒーを飲みたかっただけじゃなくて、それ以上に君に会いたかったからなんだろうって」
まるで告白のような甘い発言に、心臓が大きく波打った。
恋人だった当時でさえ、まだまともに会話もしていない頃から私に興味を持ってくれていたなんて知らなかった。嬉しくて、ちょっぴりむず痒い。
「そんな風にさらっと言わないでください……慣れてないんで」
火照る頬に両手を当てると、嘉月さんはなぜか眉根をぎゅっと寄せる。
「昴くんの父親は、君のそんな可愛い顔をずっと見ていたのか。妬けるな」
「私が言ったこと聞いてました?」
〝可愛い〟とか〝妬ける〟とか、ドキッとする言葉を使われるとどうしたらいいかわからなくなる。というか、その父親はあなたなんですが……と複雑な気分になって苦笑いした。