身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 嘉月さんと三人でいる今、ものすごく幸せだ。これから先も、この幸せを味わっていたいのは確かなのに。


『思い出させないでほしいの。あなたとのことを』


 あの時のお母様の言葉がどうしてもブレーキをかける。これ以上踏み込んだら、彼のためにならないのではないかと躊躇してしまう。

 花柄のレジャーシートに目線を落としていると、少しの間を置いて彼が口を開く。


「俺は、これからも君たちと会いたい。今、すごく幸せなんだ」


 私と同じ気持ちが穏やかな声になって耳に届き、ふっと顔を上げた。どこか遠くを見つめている嘉月さんの表情には、迷いは見えない。


「都さんに子供がいると知って、最初はショックだったし戸惑った。でもそれくらいじゃ諦めはつかないって、会うたび痛感する。自分でも驚くほど、君たちが欲しくなるばかりだよ」


 驚くのは私の方だ。まさか、嘉月さんがそこまで想っているなんて。

 記憶を失っている約半年を除けば、私たちが接した時間はごくわずか。にもかかわらず強く求めてくれるのは、彼の心のどこかにまだ私への愛が残っているから?
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