身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 昔の些細な出来事を思い出してから、俺の心を動かす女性店員がとても興味深い存在になって、ヱモリに行く時は必ず彼女の姿を探していた。

 彼女はいつも生き生きとしていて、コーヒー豆や雑貨の商品についての知識も豊富で感心する。この場所で働くのが本当に好きなのだろう。

 他の客と話している内容が聞こえてきた時も、相変わらず面白い発想をしているものだからつい耳を傾けてしまった。俺にはない彼女の感性が、純粋に素敵だと思う。

 誰に対しても誠実な接客態度も、見ていてとても気持ちがいい。なにより笑顔が魅力的で、いつも無愛想な俺の目を見て挨拶してくれるのが好印象だった。

 初めてまともに会話した時、彼女の方から話を振られて驚いたが、くだらない話で笑い合えたことが無性に嬉しかった。

 その気を許したような笑顔を俺だけに向けてほしいと、ほんの一瞬心に浮かんだあの時が、今思えば恋に落ちた瞬間だったのかもしれない。

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