身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
しんみりとした口調で告げられ、心に隙間風が吹いたような物寂しい気持ちになる。もう会えないのかと、思いのほかがっかりしている自分がいた。
それからも時々店に寄ってみたが、やはり都さんの姿はない。彼女のことを他の店員にあれこれ聞くわけにもいかず、繋がりもないので探しようがなくて、そのうち諦めてヱモリでコーヒーを買うこともなくなった。
いくら好意を抱いていたとはいえ、数回会話しただけの相手。なのに、こんなに心が彼女を求めているなんて……失った半年の間に、俺はそれほど惚れ込んでいたのだろうか。
胸のもどかしさの解消法も、涙の理由もわからないまま、気がつけば約三年もの時間が流れていた。
俺は失った半年を取り戻すために必死で、前以上に仕事のことばかり考えていた気がする。半年の間に変わった各部署の状況を把握することから始まり、進行中だったプロジェクトや新しく始めようとしていた企画を理解するだけでも労力を要した。
記憶力がよすぎることで散々悩まされてきたというのに、今度は真逆の事態で苦労するなんて。人生は時に残酷だ。