身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
 そんな朝陽は、俺がデスクに置きっぱなしにしていたカプセルトイを手に取り、ボールのように軽く投げて微笑む。


「すっかり息を吹き返したよね、百円の格安ガチャ。セーライの頑張りには頭が下がるよ」


 ウチが一回百円でできるカプセルトイを全国で販売したことで、再び注目が集まり始めた。朝陽が言う通り、こうなるまでにはそれなりの苦労があったが。


「本当に、実現させるのはなかなか大変だったよ。容器や包装の価格をできる限り安く抑えて、その分商品のクオリティーを高めて、さらに利益も出すっていうのは」
「いくら百円といっても、商品が雑だったら消費者は離れていくもんねぇ」
「ああ。でも、なんだかんだで最終手段はチュウカマンだな」


 やはり人気のキャラとコラボするのは確実に売れる。プライドのないことを茶化して言うと、朝陽は「やっぱそれなんだ」とおかしそうに笑った。

 弟との雑談を息抜きに書類をチェックしていると、彼はふとカプセルの中身をいくつか見比べて言う。


「なんかピザーマンばっかりあるけど」
「街中でやってみたら五回中三回出た。なかなかいい引きだ」
「よくなくない!?」


 満足して頷く俺に、朝陽は変な顔をしてツッコんだ。確かに、普通なら同じキャラが被ったら残念だろう。
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