身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
セミロングの髪をひとつに縛り、服装はカジュアルなパンツスタイル。仕事モードの彼女も可愛らしい。
「すみません、お待たせしました。……あれ、里実さんどうしたんですか?」
「気にしないで。いつもの病気よ」
「あー……なるほど」
胸を押さえる源さんと俺を交互に見て、都さんは納得したように頷いた。そしておかしそうに笑い、「じゃあ、また明日」とあっさり告げる。
俺の袖を軽く引っ張って歩き出す都さんに、若干心配になりつつ言う。
「いいのか? 彼女放っておいて」
「大丈夫です。本当の病気じゃないんで」
苦笑してあっさり答えた彼女は、「それより」と話を変えて辺りを見回す。
「さっそく渡したい……んだけど、こんな道端でいいかな」
「俺の車に乗るか? これから保育園のお迎えならついでに送るよ」
「あ~、せっかくですがすみません。私、自転車なので」
都さんは申し訳無さそうに謝り、俺もそうだったと思い出す。本当に渡すだけのつもりだったんだなと、少々物足りなく感じたのもつかの間。
「でも、少しだけ乗らせてもらってもいいですか?」
遠慮がちに上目遣いで言われた俺は、口元を緩めて断る理由などなく了承した。