身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
ヱモリに車で来る時は、だいたい近くのコインパーキングに停めている。今日もそこに停めた車の助手席に都さんを座らせ、ふたりきりになったところで例のものを受け取る。
「これを渡したかったんです」
彼女がトートバックから取り出したものは、一枚の画用紙。丸められたそれを広げてみると、丸や棒のようなものが乱雑にクレヨンで描かれていた。
おそらく昴くんが描いたものだろうと想像はつくが、かろうじて顔らしきものが三つあることくらいしかわからない。二歳児なのだから当然だ。
「芸術的だな」
「そうでしょう。保育園で昴が描いてきたんですよ、青來さんを」
クスクスと笑う都さんの意外なひと言に、俺は目を丸くする。
「……俺?」
「そう、『ありがとうと言いたい人』っていうお題で。これは肩車をしているところの絵みたい。よっぽど嬉しかったんですね」
感慨深げに言われてよく見てみると、確かに大きな丸で描かれた顔が上下にくっついていた。もうひとつの顔はきっとママなのだろう。
「だから、これは絶対青來さんにあげなくちゃと思って」という言葉を聞きながら、感動が胸に押し寄せてくる。