身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
鍵を開くオルゴール
昴は絵を描くのが好きだ。二歳児でも顔に目や口がある絵を描ける子はわりといるみたいだけれど、わが子も結構上手なほうだと思う。……親バカかもしれないが。
それでも、いびつな丸だったり、ぐちゃぐちゃの線だったり、まだなにを描いたのか見ただけではわからない。昨日も、保育園から持ってきたそれを眺めて正直に聞いてみた。
『これはなにを描いたの?』
『たたうるま』
『た、たた……?』
謎の単語が飛び出し、私は頭の中であらゆるものを検索する。これか?と思うものを挙げてみるものの、昴は首を横に振るばかり。
『かーくんとこ、のったれしょ!』
最終的にそう言われ、ようやくピンときて『ああ、肩車!』と人差し指を立てると、昴は満足げに頷いたのだった。
嘉月さんとお花見をした時に、昴は彼を〝かーくん〟と呼ぶようになり、家でも時々その名前が飛び出す。おかげで、家族には嘉月さんと会ったことがすぐにバレてしまい、すべて白状させられた。
今後どうするつもりなのかと問われ、私はできることなら三人で家族になりたいと答えた。そこでやや難色を示したのは父だ。