身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

 それから三日後、いつも通りヱモリで接客をしているところに、ひとりの可愛らしい女性がやってきた。


「ブルーマウンテンのホットをひとつください。テイクアウトで」


 えくぼができた笑顔を浮かべる、小動物のようなこの人は見覚えがあるような……と、曖昧な記憶をたどりつつ「ありがとうございます」と返した。

 お金のやり取りをしている最中、そういえば何年か前にも、よくブルーマウンテンをテイクアウトしていった女性がいたなと思い出す。あの人も可愛かったし、雰囲気が似ている気がする。

 そんなふうに考えを巡らせていた時。


「すみません。明河都さん、ですよね?」


 突然フルネームで呼ばれたので、おつりを渡そうとした手をぴたっと止めて目をしばたたかせた。


「はい、そうですが、どうして……」
「私、青來副社長の秘書を務めている鈴加と申します。今日は副社長のご希望でコーヒーを買いに」


 自己紹介をしてにこりと微笑まれ、私は目を丸くする。嘉月さんの秘書さんだったのか!と納得して、「はじめまして」と改めて挨拶をした。

 そして、自分の記憶が正しいかを確認してみる。
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