身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
鈴加さんが、婚約者に? 嘘、だって嘉月さんはそんなことひと言も……!
面食らって言葉をなくす私に、彼女は真剣な表情で告げる。
「私も、副社長のことが好きなんです。あなたがいなくなってから、ずっと彼のそばで支えてきました。社長も芳枝さんも、私なら信頼できるとおっしゃっています。他の男性と親密にしていた、あなたよりも断然」
発言の最後に表情をすっと冷たくする彼女を見て、言いようのない怖さを感じた。
お母様から例の話も聞いていたらしい。明らかに私を敵対視しているし、鼻につく言い方には不快感を掻き立てられる。
それに私が離れていた三年間、鈴加さんは好意を持って彼のそばにいた。その事実が煙草の火を押し付けたかのように胸を焼き、感情が黒く焦げていく。
彼女はわざとらしく眉を下げ、あたかも私を心配するような様子で見上げる。
「あなたの浮気疑惑について、まだ副社長には明かしていません。今のうちに身を引かれた方が、都さんのためになると思います」
私のためと言いながら、諦めさせようとしているのは明らかだ。こんなにしたたかな人だったとは。