身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました
「私たちの子です」
──ああ、やっと言えた。ずっと胸につっかえていたものが取れた気分で、自然に笑みがこぼれた。
嘉月さんは目を見開いてとても感激した表情を見せたものの、それはすぐに苦しげに変わっていく。
もしかして、迷惑だった? そう不安がよぎったのは一瞬で、背中に手を回されて思いっきり抱きしめられた。
「都……本当にすまなかった。すべて忘れて、ひとりにさせて。どうしたらいい……どうしたら、君を悲しませ続けた日々を償える? 昴くんにも、寂しい思いをさせた」
彼は私を力一杯抱きしめながら、声を震わせて苦悩する。罪悪感で押し潰されそうになっているだろう彼の姿に私も苦しくなって、労わるように背中に手を回す。
「嘉月さんはなにも悪いことはしていない。それどころか、私とお腹にいた昴を守ってくれた。記憶を失ったのはその代償なんです」
申し訳ないのはこっちの方。怪我をさせた上に、黙って離れた。お母様たちの反対を押し切って、嘉月さんを支える選択をしなかったのは間違いだったかもしれない。
けれど、もう過去には戻れないから、せめて未来は幸せなものにするために努力するしかない。