身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました

「これから、ずっと一緒にいてほしい。それだけでいいんです。嘉月さんと、昴と、一緒に生きていきたい」


 また熱いものが込み上げて、泣きながら大きな背中にしがみつく。


「俺もだ。もう絶対に失いたくない。家族になって、君たちを守らせてくれ」


 彼も抱きしめる腕に少し力を込め、片手で私の頭を包み込むように撫でて、力強く応えてくれた。

 離れていた時間を埋めたくて、波の音を聞きながら抱き合う。そのまま、どちらからともなく唇を寄せた。

 涙味だけれど、心にも触れるような優しいキス。ずっと感じていた心許なさが、一気に癒やされていった。


 東京へ帰る車の中で鈴加さんに会った話をすると、嘉月さんは驚くと共に不快感を露わにしていた。確かにご家族は鈴加さんを気に入っているようだが、彼自身は婚約者になる気はないと。

 彼女とはなにもなかったことにほっとして、愛されているのは私だけだと自信が満ちていく。

 そんな中、姉からメッセージが届いた。


【昴はご機嫌だよ。これから外で夕飯食べてくから、こっちは心配しないでどうぞごゆっくり】


 今日一日、こうやって昴の様子を定期的に教えてくれていたので、私は安心してデートを楽しむことができた。その時間にはまだ猶予があるらしい。
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